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2024.08.09

慢性の痛みに対する鍼灸治療

先日学術講習会を受けました。最先端の痛み研究・治療をされている伊藤和憲先生の講義です。とても面白くためになる講義内容でしたので、ここで少しご紹介したいと思います。

慢性痛とはぎっくり腰や寝違いのような急性期痛ではなく、一般的に3~6か月を超えて継続する痛みのことを指します。痛みが長引くことで防御反応として交感神経が亢進し、血管や神経が収縮し虚血状態となります。それが長期に及ぶと手足の冷えや便秘・不眠など不定主訴も引き起こします。

慢性痛は痛みを脳の体性感覚野で認識することに加え『情動』が関与し、脳の大脳辺縁系に影響し不安・抑うつ・怒りが起こります

さらに『認知』が関与すると痛みが記憶され、脳の前頭前野に影響を及ぼします。

痛みが慢性化するにつれて大脳辺縁系や前頭前野が悪さする状態になります。

この『情動』『認知』が痛みに加わると治療効果を大きく変えてしまい、治療が難航します。

慢性痛になりやすい人は特徴的な考え方や行動パターンがあります。

痛みに対する不安のためにインターネットで自分に不利になる脅迫的情報ばかり集めてしまったり、「自分だけどうしてこうなってしまったのか」「動くと痛みが悪化するから動かない」「痛みのためにやりたいことを制限している」などネガティブな感情や不安、恐れを感じ自分を壊す思考を持ちやすく【破局的思考】、それが痛みを悪化させると知られています。

例えば慢性腰痛があって痛みが広範囲に存在し、天気で痛みが悪化したり、不定愁訴が多かったり、気分で痛みが変化する場合は疼痛局所の問題だけではなく、脳が関係している可能性が高いです。

疼痛局所に鍼灸を行うことで筋緊張緩和・血流改善に伴う発痛物質の減少、さらに脊髄で痛みをコントロールすることで痛みを軽減させることに加え、脳性鎮痛を賦活させ自律神経や免疫系を調整して痛みを緩和します。

手足や顔に鍼をすると下行性疼痛抑制系のような脳性鎮痛を賦活させやすくなります。

なぜなら脳の体性感覚(体からの刺激を感じる場所)エリアで手足顔が占める領域が大きいので、手足顔への刺激は脳を活性化させやすいのです。

近年では慢性疼痛の中でも、痛覚の感じ方が変わってしまった痛覚変調性疼痛が問題になっています。

次回痛覚変調性疼痛についてご紹介したいと思います。